人工知能とデザイン

近い将来、人工知能がデザインやレイアウトをする時代がくる。

世界中の何億人もの人間が考える膨大なデータべースの中から、美しいと思う色彩感覚やバランス感覚、あるいは強弱やスペース感覚、硬い、柔らかいなどの触覚、また味覚や嗅覚に訴える独自の民族性や国民性・生き方・個性まで。ビッグデータはその地域に住む人々の視覚に訴える的確な情報をピックアップし、多様なアプローチと気の利いた口調で紹介してくる。

やがてそれは安価にパッケージ商品化され、ズブの素人が必要な文字要素や画像要素、見せたい世界観や紹介したい商品のイメージを入力するだけで、何十パターンのデザイン・レイアウト例をはじき出し、一瞬にして時代の感覚より半歩前をゆく「あたらしい」「かっこいい」「おしゃれな」デザイン感覚が提供される。人はそれをクリエイティヴと呼ぶだろう。その洗練された作業はクライアント社内の一角にある小さな部屋で働くたった一人の若いアルバイトスタッフによって生み出され、かつて我々こそがプロだと思い込んでいたベテランたちの「年季」の入ったアイデアはゴミのように吐き捨てられる・・・。

かつて、現役のグラフィックデザイナーたちが、意図せずに駆逐・侵略・殲滅してきた職業分野があった。アメリカ製のパソコンによってDTPと呼ばれる概念が生まれ、写真植字~版下~製版~印刷までの全行程がパソコン一台で完了するようになった。この20年間でグラフィックデザイナーたちの制作現場はウソのように整理され、デスクワーク化された。そして将来、現役で働く生身のグラフィックデザイナーは希少動物化し絶滅保護動物になる。

でもしつこく生存してゆく方法はあるかもしれない。

人工知能が考えもしない「0から1をつくる」発想をすること。空と大地しか色彩が存在しないアフリカの民の子供たちが、ひとたび絵筆を持ったとき、目が覚めるような鮮やかな色彩の宇宙を花咲かせるのはなぜだろう?

人々をまとめてなだめすかし、向かいたい方向へ意思統一をはかる「リーダーシップ」。トラブルを回避しようと知恵を集める連帯感などもそうだ。

虫の知らせや第六感、火事場の馬鹿力、はどうやってデータベースが説明するだろう・・?

音楽でも、どんどん自動演奏化が進む中、やはりマシーンにはできにくいことがあった。「ハプニング」もそうだし、演奏が熱くなってくるがゆえの「走った状態」やミストーンから生まれる偶然の「ハーモニー」もそうだといえる。人間は間違いもすれば、熱くもなるし酒も飲む。突拍子もない発想もある。

我々は生きているのだ。だからおもしろいのではないだろうか。

 

大阪制作 藤原

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