お祭りにみる、粋としてのデザイン。 2018.06.25

夏になった。お祭りのシーズンがきた。蒸し暑い夏の闇をあかあかと照らす夜店の灯とにぎわい。香ばしいとうもろこしを焼く匂いや、甘い焼き栗の香り。遠くで聞こえる神輿を担ぐ歓声や山車の太鼓の音がしたらもうとまらない・・・。 室町から戦国期にかけて百花繚乱のごとき華やかさを誇った「武具・甲冑・刀剣」に代表されるサムライのファッション感覚、そこにはおのれの名誉や立身出世をかけて戦場に赴いた男たちが身にまとう、鎧兜のきらびやかさの中に流れるダンディズムという美学があった。安土桃山文化はたぎるような時代の空気を浴び、それがダイレクトにデザインへ反映された。そんな時代のあおりを受けて、女性たちのまとう小袖の衣装デザインや漆器、螺鈿細工の化粧箱などにも反映された。流行の茶の湯は、その前衛的な美的感覚をもって極端に簡素化された薄暗い茶室の中で、遠く波濤を超えてきた南蛮渡来のビードロの器や怪しく光るヨーロッパの絵皿などを愛でることで成立し、世界最先端のアヴァンギャルド趣味を昇華させる。文化と人の血とデザインが狂い咲くように乱れた時代が安土桃山時代である。 やがて闘争の時代は去り天下泰平の世が訪れると、人間賛歌ともいうべき庶民の大輪が大きく花開くことになる。文学・芸能・教養・・・そして祭礼行事も爆発的に華やかで刹那的かつ継続的な世界を楽しむ、庶民のファンファーレへと開花してゆく。京、浪花、そして江戸・・・。 そんな町民文化の生んだ最大の遺産のひとつが「お祭り」だ。当初、神事としておごそかに行われた祭礼神事行事は、桃山期~江戸期にその様子を巨大に進化させ、その勢いは国内交通網や海上運送技術の発達によって全国へと伝播し、人の感受性や価値観に影響を与える。日本伝統のデザインに流れる「美意識」というダンディズムを、蒸留酒のように沸騰させ抽出したようなアルコール度数の高い液体が祭の意匠美術である。 ここではその代表的なデザインである、祭半纏または祭法被を紹介したい。関東は江戸の町民文化が息づいた、当時としては世界最大と言われた大都市。その風土の中から生まれたのが、祭半纏である。町名や集合体の名を、太く豪快な歌舞伎文字や相撲文字といわれた自己主張の強い書体で大胆に染め抜かれた祭半纏。色は渋く細いラインが特徴。裾は長めで、腰には角帯を締める。江戸期までは大型の山車が何台も出たらしいが、交通事情もあって担ぐタイプの神輿へと変貌してゆく。 関西では有名なだんじり。だんじり自体は近畿各地に無数にあるが、岸和田の特徴は重さ4トンの山車を曳きまわす躍動感にある。戦後から現代にかけて進化してきた祭の衣装のひとつの完成形がある。頭に巻くハチマキから、法被の裾や袖の長さ、パッチのスリム感に到るまで、その美学は徹底している。同じく粋では関東や関西に引けを取らない九州博多の祇園山笠に参加する男衆の水法被姿。町名文字は斜めに染め抜かれ、独特のかっこよさを生んでいる。 日本人はデザインの民族だ。まるで日本刀のように研ぎ澄まされた、無駄の一切ない完成度を誇っている。また、無粋なものはその長い歴史の中で淘汰されてきたのである。このような文化にふれながら、われわれ日本人は普段の生活の中から、独特の美意識・デザイン意識を育んできたのである。

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